2017年8月10日木曜日

アラビア語

去年度1年間、大学でアラビア語を習っていた。
はじめに言っておくと、わたしがこれまで学んだ言語の中でもっとも難しかったしもっとも面白かった。言語ってすごい。本当に人の考え方そのものに直結すると思う。

アラビア語の特徴は、なんといっても「文字」そして「語根構造」である。
大半の人々にとって、文字を覚える経験はほとんど記憶にないのではないだろうか。今回のアラビア語で、わたしは文字を覚えるという作業には2段階あることを知った。まず「文字のかたち」を全て覚えること、そして音と「かたち」を結びつけることだ。散々書いてなんとか文字の形を全て覚えても、それが発音できるかどうかは別の話になる。これがすらすらできるようになってくれば話すことは容易いのではないかと思う。これはおそらく英語でも同じだ。すらすら発音ができるということは、文字と音とが完璧に脳内で結びついており反射的に口をついて出てくることがまず第一にあり、さらにいうなら、どのような音の並びの傾向があるかを体が覚えているということである。
アラビア語文法上の最大の特徴が「語根構造」である。じつはアラビア語の文字は基本的に子音しか表現していない。そこに発音記号をつけることで母音を付加するわけだが、アラビア語では子音が非常に重要であることを思うとちょっと納得できてしまう。「語根」とはつまり3つないし4つの子音の組み合わせのことである。ここからあらゆる語が派生してゆくのである。
例えを出す。ここにk t bの3つの子音がある。こうして並べたときこの子音の組は、ニュアンスとして「書く」という意味を持つ。ここに母音や活用を施して、例えばkatabaとするなら意味は「書いた」、kitahbunとするなら「本」。動詞も名詞も形容詞もみんな同じ子音を持ち、ゆるやかに意味で繋がっている。その母音や活用の仕方にもパターンがあり、意味が付与される。多少の語根と文法がわかれば、新しく出てきた単語でもだいたいの意味をとれる。アラビア語はすごい。わたしにとっては初めて出会ったシステムで、その分だけ、世界の見方の方向がぐっと多様化した気がした。

他の言語を知ることは母語以外の思考回路を知るということだ。thatのない世界にいる我々とthatがあらゆる意味を持つ世界にいる人々と、きっと物事の見え方や解釈の仕方が違う。アラビア語は本当に面白い。アラビアの単語は馴染みがなすぎて覚えるのに時間がかかるけれど、一歩一歩踏みしめていけたらと思う。そしていまよりもっと、自由になりたい。

今年の夏は言語をやっています。頑張ります。

次のテーマは「エンカウント」です。その次のテーマは「台詞」です。夏で、夏休みだ。

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